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横浜地方裁判所 昭和48年(行ウ)19号 判決 1977年3月09日

原告 株式会社本福商店

右代表者代表取締役 木村アキノ

右訴訟代理人弁護士 福田晴政

同 築尾晃治

被告 横浜市長 飛鳥田一雄

右訴訟代理人弁護士 塩田省吾

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告(請求の趣旨)

1  被告が原告に対し昭和四八年五月二八日四八経第五一〇三号をもってなした横浜市中央卸売市場南部市場付属営業業務の不許可処分は、これを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

旨の判決。

二  被告(請求の趣旨に対する答弁)

主文と同旨の判決。

第二当事者の主張

一  原告(請求原因)

1  原告は、玉子焼、伊達巻、海産練製品の製造販売ならびに蜂蜜の販売を業としているものであるが、昭和四八年二月三日横浜市中央卸売市場南部市場開設準備室を経由して、被告に対し、横浜市中央卸売市場業務条例(以下「業務条例」という。)二九条一項に規定する横浜市中央卸売市場南部市場(以下「南部市場」という。)の第一種付属営業人、業種「焼卵」の業務許可申請をなしたところ、被告は、原告に対し、昭和四八年五月二八日付書面をもって焼卵業種が「南部市場の収容業種として不適格である。」ことを理由として、原告の右業務許可申請を不許可とする旨の通知をなした(以下において右不許可処分を「本件不許可処分」という。)。

2  ところで、被告は、昭和四八年一月二〇日から同年二月一〇日までの間南部市場付属営業人を募集したのであるが、右募集については、「横浜市中央卸売市場南部市場付属営業人募集要項」(以下「募集要項」という。)を定め、右募集要項に南部市場第一種付属営業人、募集業種「焼卵」、募集業者数一名、また選考方法として、「選考は、書類審査、信用調査、面接調査及び横浜市中央卸売市場南部市場業者収容選考委員会の意見を参酌して市長が行います。ただし、有資格者多数の時は抽の方法をとる場合もあります。」と明示し、これを応募者に交付して募集をなした。

3  右募集要項に規定する焼卵業種については、原告のほか、訴外株式会社玉栄も業務許可申請をなしたのであるが、被告は、原告および訴外玉栄いずれの業務許可申請に対しても、「収容業種として不適格」を理由として不許可処分をなし、結局焼卵業種については募集を中止し、南部市場第一種付属営業人として一切許可しないことを前提として、本件不許可処分をなした。

4  しかし本件不許可処分には、次のとおり違法が存在する。

(一) 本件不許可処分は、募集要項に違背するものであり、違法である。

(1) 業務条例二九条一項、三〇条は、南部市場における生鮮食料品等の卸売を行う者に対する業務許可の事務を被告の権限とし(右許可を与えられたものを「第一種付属営業人」という。)、同二九条二項は、許可を受けられる者の数の最高限度を規則に委ね、これを受けて、横浜市中央卸売市場業務条例施行規則(以下「施行規則」という。)三三条は、第一種付属営業人の営む業種および業者数の最高限度を定めている。

ところで、右施行規則三三条は、第一種付属営業人として食料品等卸売業四三人とのみ定めているにすぎず、右食料品等卸売業のうち、具体的にいかなる業種に対し、業務許可を与えるべきかについて規定を欠いている。

(2) これら施行規則に定めなき事項については、被告がその都度実施細目を定め、募集事務を処理していくものである以上、被告の定めた実施細目は、施行規則に規定なき事項についてはこれを補充し、これと一体をなすものというべきであり、それ故、募集要項は、右実施細目として、実質において規則に該当するもの、あるいは少なくとも行政行為の準則となるべきものとして、応募者および被告を拘束するものといわなければならない。

原告は、募集要項に定める資格条件を全て具備するものであるにもかかわらず、被告は、前記のとおり募集要項に違背し、焼卵業種について募集を中止し南部市場第一種付属営業人として一切許可しないことを前提として本件不許可処分をなしたのであるから、本件不許可処分は、募集要項に違背する違法なものとして取り消されなければならない。

(二) (仮に右主張が認められないとしても)

本件不許可処分は、禁反言の法理ないし信義誠実の原則に違背するものであり、違法である。

(1) 原告は、被告が募集要項に定めた前記選考方法に従い、焼卵業種について必ず一名は許可するものと信じ、被告に対し業務許可申請をなしたものである。

(2) しかるに、被告は、自から定めた選考方法を無視し、焼卵業種については募集を中止し南部市場第一種付属営業人として一切許可しないことを前提として本件不許可処分をなしたのであるから、右は、募集要項を信頼した原告の利益を無視するものであり、それ故、本件不許可処分は、禁反言の法理ないし信義誠実の原則に違背する違法なものとして取り消されなければならない。

(三) (仮に右主張も認められないとしても)

本件不許可処分は、被告が裁量権を逸脱ないし濫用してなしたものであり違法である。

(1) 被告は、焼卵業種が南部市場の収容業種として不適格であるとしてその募集を中止し、南部市場第一種付属営業人としては一切許可しないことを前提として、本件不許可処分をなしているが、右焼卵業種の募集中止自体に、被告には適正手続違背、重大な事実誤認、他事考慮等被告に与えられた裁量権の逸脱ないし濫用がある。

すなわち、被告は、前記のとおり自から募集要項を定め、南部市場第一種付属営業人として焼卵業種一名を募集し、かつ、原告の業務許可申請を受理したのであるから、焼卵業種について募集を中止するについては、合理的理由を必要とし、かつ、その合理性を担保するために、告知と聴問等原告に反対立証の機会を与える必要があったといわなければならないところ、被告は、原告に対し、何ら反対立証の機会を与えることなく、焼卵は他の食品にくらべ食中毒の危険性が高いものであり南部市場の収容業種として不適格であるとして、一方的に焼卵業種の募集を中止した。

しかし、右食中毒の危険性については、それ自体重大な事実誤認であり、そもそも焼卵業種の募集を中止する合理的理由とはなし得ないものであるのみならず、被告において右を理由として焼卵業種の募集を中止したのは、南部市場第一種付属営業人を募集する以前から、被告と訴外玉栄間において、訴外玉栄に対し業務許可を与える旨の密約があったところ、たまたま原告も右募集に応じ、募集要項に従った選考方法では、訴外玉栄との右密約が実現できなくなることを被告において危惧、考慮した結果であり、結局、焼卵業種の募集の中止自体、適正手続違背、重大な事実誤認、他事考慮等被告に与えられた裁量権の逸脱ないし濫用があったといわなければならない。

(2) それ故、右焼卵業種の募集中止を前提とする本件不許可処分も、また、被告に与えられた裁量権を逸脱ないし濫用してなされた違法なものとして取り消されなければならない。

5  よって、原告は、被告に対し、本件不許可処分の取り消しを求める。

二  被告(請求原因に対する認否および主張)

1  請求原因第1ないし第3項は認める。

2  同第4項(一)のうち、(1)については認めるが、(2)の募集要項が実質において規則あるいは行政行為の準則となるとする点および本件不許可処分が違法であるとする点は争う。

3  同第4項(二)のうち、本件不許可処分が違法であるとする点は争う。

被告は、昭和四八年一月五日付横浜市報において、南部市場第一種付属営業人の募集について「市場の設置等に関する条例等が未確定であるので、募集業種および募集業者数を変更することがある。」旨を公告しており、本件不許可処分は、禁反言の法理ないし信義誠実の原則に反するものではない。

4  同第4項(三)のうち、被告が原告に対し反対立証の機会を与えなかったことは認めるが、被告に事実誤認、他事考慮があったとする点および本件不許可処分が違法であるとする点は否認ないし争う。

なお、適正手続の保障については、当該処分の性質、目的、内容によりその具体的内容が決せられるべきものであり、本件の場合、被告は、卸売市場に対する日常的な監督を通じてその実態を把握し、固有の知識を有しているのであるから、業種の選定につき原告に反対立証の機会を与える必要はそもそもない。

5  本件不許可処分の理由は、南部市場第一種付属営業人として焼卵業者の募集を中止したので許可しない、というにある。

すなわち、

(一) 南部市場は、卸売市場法(以下「法」という。)にもとづき農林大臣の認可を得て開設されたものであり、法九条二項二号に定める取扱品目については、業務条例(法九条一項にいう業務規程に該当する。)三条がこれを定め、また、業務条例二九条一項は、業務条例三条に定める取扱品目以外の生鮮食料品等の卸売を行なう者、市場の取扱品目の保管、貯蔵、運搬等を行なう者、その他市場機能の充実に資するものとして規則で定める業務を営む者に対し、被告が市場の業務の適正かつ健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、市場内の店舗その他の施設において業務を営むことを許可することができる旨規定し(右業務許可を受けた者を第一種付属営業人という。)、右業務条例の規定を受けて施行規則三三条は、南部市場につき第一種付属営業人として食料品等卸売業四三人と定めている。

(二) ところで、焼卵業種について、被告は、法九条二項二号に規定する取扱品目とは指定せずに農林大臣の開設認可を受けたのであるが、市場寿司商組合の要望を入れ、右業務条例二九条一項にいう第一種付属営業人として、原告主張のとおり焼卵業者一名を募集した。

右募集に対し原告および訴外玉栄が応募したため、横浜市南部市場開設準備室がその選考調査にあたったところ、訴外玉栄が過去に中毒事件を起こしていたこと、しかも焼卵が食中毒の危険性のあることが判明したため、危険の分散化ということを考慮し、焼卵業者を二名に増し、その使用する施設を当初予定していた一小間から各半小間にすることにして、原告および訴外玉栄と交渉したのであるが、原告が右交渉に応ぜず、調整がつかなかったため、結局焼卵業種については募集を中止し、原告および訴外玉栄双方の業務許可申請を不許可にした。

(三) 以上の経過により、被告は、一旦なした焼卵業種の募集を中止し、本件不許可処分をなしたのであるが、そもそも、第一種付属営業人としていかなる業種を認めるかについて、被告は、市場経営上の観点から自由なる裁量にもとづきこれを決することができるものである以上、一旦募集をなした特定業種につき、右募集を中止するか否かについても、被告は、自由なる裁量にもとづきこれを決することができるのであり、それ故、本件において焼卵業種につき募集を中止したこと自体、被告には何らの違法もなく、その当然の結果としての本件不許可処分にも何らの違法はない。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因第1ないし第3項については、当事者間に争いがない。

二  そこで、以下本件不許可処分の適否について検討すると、原告は、違法事由の第一として、本件不許可処分の募集要項違背を主張するので、まず右主張について判断する。

(1)  ところで、原告は、右主張の前提として、募集要項は実質において規則、あるいは少なくとも行政行為の準則となるべきものであると主張する。

よって、まず、募集要項の性質につき検討すると、確かに、業務条例二九条一項、三〇条は、南部市場における生鮮食料品等の卸売を行う者に対する業務許可(右許可を受けた者を「第一種付属営業人」という。)の事務を被告の権限とする一方、同二九条二項は、右許可を受けられる者の数の最高限度を規則に委ね、右規定を受けて施行規則三三条は、第一種付属営業人の営む業種および業者数を食料品等卸売業四三人と規定し、結局右食料品等卸売業のうち、いかなる業種に対し業務許可を与えるかについて、具体的な規定を何らもうけていないのであるから、被告が右食料品等卸売業のうちから第一種付属営業人としての業務許可を与えるべき具体的業種を選定し得る権限を有していることは明らかである。

しかし、他方、原告が実質において規則、あるいは少なくとも行政行為の準則となるべきものと主張する募集要項が、それ自体地方自治法一五条に規定する規則に該当しないことは多言を要しないのみならず、業務条例、施行規則は、募集要項につき何らの規定をももうけておらず、また、《証拠省略》によれば、そもそも、募集要項は、南部市場に関する業務条例が昭和四八年一〇月一五日に公布される以前、すなわち、被告が右説示の権限を業務条例により付与される以前に作成されたものであることが認められる。したがって、募集要項は、被告が南部市場開設にむけて行政事務処理の都合上作成したもの、すなわち、業務条例制定後第一種付属営業人の募集に着手したのでは、その選考許可に時間がかかり、南部市場の開設が著しく遅れるため、条例制定前に許可を内定し、条例制定後直ちに許可するという手順をとる必要があったため、一応の基準として作成されたにすぎないものと解すべきであり、行政行為の準則としての効力は有しないといわなければならない。

(2)  結局、原告の募集要項違背の主張は、その前提たる募集要項の効力に関する主張自体、当裁判所として採用できないものである以上、失当であり、排斥をまぬがれない。

三  次に、原告は、違法事由の第二として、本件不許可処分が禁反言の法理ないし信義誠実の原則に違背する旨主張するので、この点につき判断する。

たしかに、前記認定のとおり、被告が一方において自から募集要項を定めながら、他方右募集要項に従わず、中途で焼卵業種の募集を中止し、結果として右募集要項に違背する本件不許可処分をなしたことは、法の執行者たる地位にある被告行政庁として軽率のそしりを免れないであろう。

しかし、翻って考えるに、行政行為の分野において信義誠実の原則がいかなる範囲において妥当するものであるかの判断はさておき、《証拠省略》によれば、被告は、昭和四八年一月五日付横浜市報において、南部市場第一種付属営業人募集の公告をなした際「市場の設置等に関する条例等が未確定であるので、収容業種についても変更することがある。」旨付記していたことが認められるのであるから、被告は、募集の当初より焼卵業種については募集の中止があり得ることを明示していたといわざるを得ず、また、募集要項の性質が前記二(1)説示のものであったことを考慮すれば、たとえ募集要項には焼卵業種の募集中止について記載を欠いていても、本件不許可処分をもって禁反言の法理ないし信義誠実の原則に違背する違法なものということはできない。

結局、原告が違法事由の第二として主張するところも失当であり、排斥をまぬがれない。

四  次に、原告は、違法事由の第三として、本件不許可処分についての被告の裁量権の逸脱ないし濫用を主張するので、右主張について判断する。

(1)  本件不許可処分の直接の原因が、被告において焼卵業種の募集を中止したことにあることについては、当事者間に争いがないところ、原告は、右焼卵業種の募集中止自体につき、被告に適正手続違背、重大な事実誤認、他事考慮等裁量権の逸脱ないし濫用があった旨主張する。

よって、まず、焼卵業種の募集を中止するにつき、被告が手続面を含めいかなる範囲において法に覊束されるかについて検討する。

(一)  ところで、一般に、行政処分に関し、行政庁が手続面をも含めていかなる範囲において法に覊束されるかは、当該行政処分自体の性質と当該行政処分の根拠となる法規の規定の仕方等とを合わせ考慮してこれを判断しなければならないところ、本件で問題とされる第一種付属営業人に対する業務許可については、業務条例は、その二九条一項において業務許可との名称を用いているものの、同六二条以下において使用料の規定をおき、行政財産たる市場施設の使用を当然その前提としており、右業務許可は、一面において行政財産の使用許可としての性質、すなわち、私人に対する権利の制限でなく、権利の付与としての性質を有すること、同二九条第一項は、ただ単に「市長において市場の業務の適正かつ健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、市場機能の充実を図り、また出荷者、売買参加者、買出人その他市場の利用者に便益を提供するため、生鮮食料品等の卸売を行う者に対し、市場内の店舗、その他の施設において業務を営むことを許可することができる。」と規定し、右生鮮食料品等の卸売を行う者のうち、いかなる具体的業種の者に対し、業務許可を与えるべきかについては何ら規定をもうけていないこと(施行規則においてもこの種規定は存在しない。)および業務条例、施行規則は第一種付属営業人の募集手続およびその選考手続につき具体的には何らの規定もおいていないことを合わせ考慮すれば、被告は、第一種付属営業人として右生鮮食料品等の卸売を行う者のうち、そもそもいかなる具体的業種に対し業務許可を与えるか、右業種の選考手続をいかに行うか、また、右特定された業種についていかに募集手続を行うかについて、自由な裁量にもとづき、これを決することができるものと解さざるを得ない。また、募集要項自体の性質が前記二(1)説示のとおりであることを考慮すれば、たとえ、被告において募集要項を定め、特定業種について募集に着手し、かつ、右募集に対し応募者があった場合においても、すでに特定人に対し業務許可を与えた場合を除き、被告は、手続上何らの拘束も受けることなく、あらためて自由なる裁量にもとづき、収容業種を決定(変更を含む)し、応募者を選定することができるものと解すべきである。

(二)  結局、本件の場合、被告の有する右裁量権は、募集要項を定めたことによっては、何ら変更されないのであり、それ故、被告は、募集要項に何ら拘束されることなく、あらためて自由なる裁量にもとづき南部市場の収容業種を決定できるもの、換言すれば、右裁量権の範囲内であるかぎり、何ら特段の理由、手続を要することなく焼卵業種の募集の中止をもなし得るものといわざるを得ず、右と異なる原告の主張は採用できない。

(2)  以上説示によれば、本件の争点は、被告において焼卵業種を南部市場の収容業種としなかったこと(焼卵業種の募集を中止したことは、結局、被告において焼卵業種を南部市場の収容業種から除外したことに帰する。)につき、被告に裁量権の逸脱ないし濫用があったか否か、換言すれば、被告に行政目的を無視し、不正な動機や恣意独断等社会通念上著しく妥当を欠く事由が存したか否かにある。

ところで、原告は、この点に関し、被告が焼卵業種を南部市場の収容業種としないことにした理由として主張する焼卵の食中毒の危険性は、重大な事実誤認であり、真の理由は、被告と訴外玉栄間に密約が存し、募集要項に従った選考方法では右密約を実現できなくなることを被告において危惧、考慮したためである旨主張する。

しかし、右原告主張のうち、被告と訴外玉栄間に密約が存した事実を認めるに足りる証拠はない(《証拠判断省略》)のみならず、《証拠省略》によれば、焼卵が他の食品に比し特段食中毒の危険性が高いものであるか否かはさておき、焼卵自体食中毒の危険性を有することが認められるのであり、また、焼卵業種が南部市場にとって必要不可欠なものとは本件全証拠によるも認められない。したがって、被告が焼卵業種を南部市場の収容業種と認めなかったことについて、被告に行政目的を無視し、不正な動機や恣意独断等社会通念上著しく妥当を欠く事由があったと認めることはできないし、他に右事由の存在を窺わせるに足りる証拠もない。

(3)  結局、被告が、焼卵業種を南部市場の収容業種から除外したこと、すなわち、焼卵業種の募集を中止したこと自体につき、その当不当の問題は別として、被告に裁量権の逸脱ないし濫用はなかったものというべく、右募集中止の当然の結果としての本件不許可処分についても、被告に裁量権の逸脱ないし濫用はなかったものといわざるを得ず、それ故、これに反する原告の前記主張は、失当として排斥をまぬがれない。

五  以上の次第で、本件不許可処分が違法であるとの原告の主張はすべて理由がないのであるから、原告の本訴請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸清七 裁判官 吉岡浩 松崎勝)

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